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​二〇二四年十一月の句会より
初霜をおろして空に何もなし     吉岡簫子
星空へ掲げて帰る酉の市       松村史基
大綿の風に煽られ掬はれて      武藤星江
夜を越え国境を越え鯨来る      菅谷 糸
初霜の銀ほどく光かな        葛原由起
突き上ぐる空へと銀杏黄葉かな    花川和久
金色に輝く方へ酉の市        木村直子
旅の空重き雲あり桃青忌       野末トヨ
初霜の大地縁取る日の出かな    笹尾清一路
人波をおかめへらへら酉の市     涌羅由美
​野分会 十一月の十句
鯨
​今月の十句
​二〇二四年十月の句会より
穭田やもつと生きよと神の声     松藤素子
敗蓮の朽ちゆく池の慈愛かな     太田ゆう
色艶に甘さ見定め葡萄買ふ      花川和久
足音の夜食残してゆきにけり     松村史基
立ち尽くす敗荷揺らす濠の風     田中利絵
静かなる穭の先の夜景かな      井上大輔
持て余す返信ひとつ秋灯下      中村恵美
おしなべて俯いてゐる初紅葉     青園直美
敗荷に夢の続きといふがあり     石丸雄介
穭田や小さき命の風の詩       奥村 里
​野分会 十月の十句
​二〇二四年九月の句会より
目の合へば笑み返しけり秋の蛇   笹尾清一路
珍獣の棲みつく空家草の花      松藤素子
ゆきあひの風の余白に秋の蝶     涌羅由美
鶏頭の赤より暮るる札所かな     葛原由起
蛇穴に入る誘惑を振り切つて     池末朱実
ひさびさの雨に上向き草の花     荒井桂子
曼珠沙華勢ひの朱といふ孤独     中村恵美
ありのみの一糸まとはぬ甘さかな   松村史基
幾千の命を繋ぎ草の花        太田ゆう
蛇穴に入る唐突に慎重に      鳴戸まり子
​野分会 九月の十句
​二〇二四年八月の句会より
水風呂に円き西瓜の弾みをり    笹尾清一路
空蝉や蝉の一生知る大樹       武藤星江
六斎の鉦に招かれ去りし風      石丸雄介
鮮度良き音を聞き分け西瓜買ふ    西尾浩子
一瞬と思ふ手花火闇に溶け      藏本 翔
六斎の鐘この先の千年を       井上大輔
大文字歓声上がる一画目       荒井桂子
ひとさじに目を丸くして氷菓子   椋 麻里子
六斎の空に定まる太鼓の音     河野ひろみ
摘みたての西瓜を朝日ごと籠に    杉森大介
​野分会 八月の十句
​二〇二四年七月の句会より
いうれいのもの言ひたげな軸涼し   山田佳乃
美人画の商品タグが付きし蚊帳    井上大輔
大琵琶の浮かず溺れず泳ぎたる    青園直美
夕菅や五岳の紅く染まる時      池末朱実
わが視線捉ふ触覚油虫        花川和久
蝉の声途切れし時の風の音     鳴戸まり子
遊船のひとりひとりに風来る     相沢文子
耳奥を搔き回すかの蝉時雨      田中利絵
学び舎の小さき緑蔭ちさき風     酒井湧水
見降ろせる秀次の夢街晩夏      奥村 里
​野分会 七月の十句
​二〇二四年六月の句会より
猛る朱に潤む朱のあり花石榴     菅谷 糸
荷を解けば子等の寄り来る水見舞   中村恵美
句碑文字の先師の息吹若楓      杉森大介
蝸牛空の重さを引き摺りぬ      涌羅由美
一本の大樹石榴の花の点       塚本武州
水見舞旬を戴く有難さ        木村直子
喪の家の軒を漂ふ蛍の夜       花川和久
遠き日の蚊帳はらからの別天地    葛原由起
流れ行く雲に祈りの水見舞      石丸雄介
朗らかに朱色を解く花石榴     河野ひろみ
​野分会 六月の十句
​二〇二四年五月の句会より
明日の色明日の色へと山若葉     山田佳乃
公園の隅に風あり姫女菀       児嶋貴和
海原を跳ねて卯浪を追ふ卯浪     菅谷 糸
野山へと色の加はり代を掻く     杉森大介
紺色の庭師若葉に囲まるゝ      岸田祐子
姫女菀井戸端会議盗み聞く      西尾浩子
草笛の人黄昏を連れて来る      松村史基
撮る人の息をころしてゐる牡丹    荒井桂子
手折りても笑つてをりぬ姫女菀   笹尾清一路
ぎこちなく名刺出す手に若葉風    田中利絵
​野分会 五月の十句
​二〇二四年四月の句会より
迫り来る作業着の腕烏の巣      武田奈々
待つ時間女に多く菜種梅雨      小寺美紀
百歳の笑みと涙の花の宴       酒井湧水
雨の鬱棚に護られ藤真白       葛原由起
天辺に日と星の守る烏の巣      涌羅由美
菜種梅雨草のにほひの幾重にも    相沢文子
不揃ひの吾子の前髪山笑ふ     椋 麻里子
そしられし古さも宝昭和の日     花川和久
何もせぬことの贅沢菜種梅雨    河野ひろみ
烏の巣にも届きたる神の息      進藤剛至
​野分会 四月の十句
​二〇二四年三月の句会より
引鶴の覚悟を乗せてけふの風     松藤素子
にしひがし言の葉集ふ伊勢参     荒川裕紀
日本の朝日を曳いて鶴帰る      荒井桂子
菜の花の黄のきらめきを摘む小道  椋 麻里子
青空に勝るミモザの花明り     鳴戸まり子
鶴引いて空の広さの残りけり     奥村 里
朝は無き流氷闇に戻りをり      塚本武州
卒業の子のまなざしの雲にあり    進藤剛至
田を残し空を残して鶴の引く     伴 統子
神代より続く木洩れ日伊勢参     葛原由起
​野分会 三月の十句
​二〇二四年二月の句会より
こんにやくを終の墓標と針供養    酒井湧水
盆梅の地植ゑの横に二三鉢      木村直子
扉打つ真夜の風音雪女郎       花川和久
合はせれば樹齢千年盆梅展      松藤素子
詩心の生るるまでの梅見かな     塚本武州
雨粒のふふむ白梅香をふふむ    椋 麻里子
針供養学生達の祈る夢        児嶋貴和
春寒を乗せて無人の観覧車      涌羅由美
盆梅や今日新しき花二つ       松村史基
待針にかすれし名前針供養      菅谷 糸
​野分会 二月の十句
​二〇二四年一月の句会より
スケートや前奏を待つ間の静寂    武田奈々
若水の宇宙を巡り来し雫       松藤素子
扉打つ真夜の風音雪女郎       花川和久
暁の床板固し寒稽古        渡辺真理子
スケートの美技に瞳の滑りゆく    山田翔太
わが歩み道となりつつ日脚伸ぶ    武藤星江
若水の底に故郷の空の色       荒井桂子
かまくらの中に小さき忘れ物    椋 麻里子
スケートや手すり掃除をすることも  武田優子
若水に張りついてゐる星の息     進藤剛至
​野分会 一月の十句
​二〇二三年十二月の句会より
熊もまた人に会ひたくなき山路    涌羅由美
おさんどん蕎麦に暇なし主婦の除夜  西尾浩子
著ぶくれの肩の重さといふ安堵    酒井湧水
全身の愚痴集めたる息白し      藏本 翔
熊穴に入り爪痕の木々の黙      木村直子
日記読み返せば除夜の独り言     伊藤法子
似てきたる親子の背中おでん屋に   奥村 里
北風を勝者の息の走りゆく      松村史基
除夜の湯の大きくわれを包みけり   進藤剛至
熊穴に入るや山河の実りもて     吉岡簫子
​野分会 十二月の十句
​二〇二三年十一月の句会より
凩の吹き込む峡にある奈落      中村恵美
青空の柚子を剥がして籠の中     杉森大介
大綿の風に蹴られて落ちにけり    武藤星江
茶の花や雨の優しきひとところ    葛原由起
冬帝や立坑櫓シルエット       藏本 翔
サンルーフ開けて見上ぐる冬日濃し 鳴戸まり子
目尻より微笑みを読む小六月     山田翔太
ビロードを纏ふなぞへや草紅葉    涌羅由美
根に力蓄へ枯葉落としけり      花川和久
落葉蹴りちらしてをさな巨人めく   椋麻里子
​野分会 十一月の十句
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