髪を梳く柘植柔らかき春の夜 吉岡簫子
こでまりのぽんぽんと日を弾きをり 小寺美紀
太陽の熱を閉ぢ込めたる西瓜 青園直美
薄氷に描く心の風模様 藤丸千香子
噴水や子等の集まり風呂と化す 金子奈緒美
地に集ふ光の精や銀杏散る 阪井邦裕
地平線消すモンゴルの星月夜 藏本 翔
夕立の五粒目からの勢ひかな 鳴戸まり子
学び舎と地域を繋ぐ初戎 荒川裕紀
神々の高さに鷹の光をり 山田佳乃

参
野分会の俳句
言葉みな違ふ仲間とテント張る
顕微鏡越しの天道虫の翅
プリズムとなりたる花瓶ヒヤシンス
実験のミジンコ探す秋の水
藏本 翔
1987年、福岡県生まれ。1994年ホトトギス初投句。中学校教員
重力の無き空蝉にある力
日差より濃き黄落の道明り
磴のぼる囀の声近づけて
松籟の野分となりて幹揺らす
鳴戸まり子
ホトトギス投句歴 十七年
ホトトギス同人
好きな余暇の過ごし方 映画鑑賞・フランス・スイスのニュースや動画視聴
初戎心願銅鑼の音となりて
復興の祈りの満ちて初戎
地下鉄の出入口発放生会
距離取れど氏子沸きたる浦祭
荒川裕紀
1977年大阪市生まれ。1991年以降の中学3年間、稲畑汀子先生に師事。1994年よりホトトギス投句。今宮戎神社十日戎献詠俳句「特選」等。趣味・仕事として祭礼・巡礼を実践。
マスクして他人のやうに歩く街
片栗の花聴いてゐる水の声
コスモスの色掻き混ぜてゐて静か
山滴るや日本は竹の国
山田佳乃
1965年 大阪生まれ ホトトギス同人 「円虹」主宰 ホトトギス投句歴17年
第21回日本伝統俳句協会賞
「春の虹」「波音」「残像」
獅子舞の獅子の小さき藁草履
遠足の列の伸びたり縮んだり
切通し奥へ奥へと著莪の花
寒鯉の寄り来て顔を出さぬまま
青園直美
1974年生まれ。
2021年より日本伝統俳句協会会員。
進水に祝ぐシャンパンや風光る
春暁や子の合宿の玉子焼く
筝の音に鎮もる須磨の花篝
まだ濡れし髪をまとめて踊の輪
藤丸千香子
甲南高校の保護者の俳句会「紅梅会」で俳句に出会いました。
ピアノ講師の母のもと、音色に触れる日々を過ごし、現在は着付師、クレイフラワーの講師をしています
青青と空へ一路や竹の春
蓙敷けば天より照葉鎮座して
紫陽花や土の味みて色つけて
一人より二人が寂し秋鰯
金子奈緒美
1981年生 福岡県出身 ホトトギス投句歴1年
長年の父の勧めがあり「父とのコミュニケーションのひとつ」と考え、俳句の世界へ足を踏み入れる。現在奮闘中。
こんな日は西瓜に勝るものはなし
クリスマスディナーショーてふプレゼント
沢の綺羅追ふて山女の跳ねる綺羅
枝の揺れて空は柳絮のものとなり
阪井邦裕
春の灯のすれ違ふなり屋形船
ふきのたう伸ぶ厩舎前停留所
触角の守宮の口に消えゆけり
夏帯やくるりと風を巻き込めり
吉岡簫子
幼少より俳句結社の主宰をしていた祖父のもとで俳句に親しむ。
野分会へは山田佳乃さんの勧めで入会。
趣味は着物のコーディネート。
飛び込んで揺られてみたき桜かな
夜の窓を星座のやうに守宮かな
秋の山ほどいて編んでみたき色
封じ込む想ひもあらむ冬木立
小寺美紀
京都府生まれ。米国系企業に勤務の傍ら書いた大学院の卒論に英語俳句を取り上げたことから、英文学者・故平井雅子先生に誘われて初めて参加した句会で俳句の楽しさを知り、2011年より野分会参加。
